血糖が高い
イメージされるのは当然糖尿病でしょう。
高血圧症や脂質異常症に比べ、悪いイメージを抱きがちな病気ですが、真っ当に評価し対応すればそんなことはありません。
に分けて考えていきましょう。
①糖尿病とはそもそも何か?
そもそも糖尿病とは何なのでしょうか。一言で表すと、
「慢性の高血糖」
です。「慢性」と「高血糖」の両方が重要です。
「高血糖」というのはつまり、「尿糖ではなく血糖が大事」ということです。尿糖がいくら出ようが基本的には問題なく、血糖値が高いことが大きな弊害を生みます(血糖値を下げるため、あえて尿糖を増やす様な糖尿病薬もあります)。
「慢性」というのはつまり、「瞬間的ではない」ということです。スイーツバイキングでドカ食いをして、一時血糖値が上がった様な方を糖尿病とはいいません。食前も食間も食後も、昨日も今日も明後日も、ずっと血糖値が高い方を糖尿病と呼ぶのです。
瞬間的に上昇する血糖も無害ではありません。しかし糖尿病が引き起こす一番の弊害は、慢性的な高血糖が全身の血管をじわじわと痛め、年単位の時間をかけて多くの臓器に「合併症」というトラブルを起こすことであるため、この様な定義となっております。
② どの様に程度を評価するか?
①の内容を視覚的に分かりやすく表してみましょう。
縦軸に血糖値、横軸に1日の中での時間をとったグラフを作ると、下のようになります。
青色のグラフが健常な方、紫色のグラフが糖尿病の方、赤色のグラフがその中間の境界型糖尿病(いわゆる糖尿病予備群)の方です。
ただ血糖値だけに注目すると、誤解を生じる可能性があることに気づきます。
図の○で囲ったタイミングで血糖値を測ってしまうと、健常な方と境界型糖尿病の方、あるいは境界型糖尿病の方と糖尿病の方の間で、血糖値は変わらないという結果になってしまいます。
しかしこれは、再度グラフ全体に目をやり長期的な血糖値を見れば、誤りであると容易に気付けるでしょう。
長期的な血糖値を評価するためには、それぞれのグラフの中央を通る様なラインを引き、そのラインの高さを比べるという手段があります。
このラインの高さのことを、
HbA1c(読み方はヘモグロビンエーワンシー、単位は%)
と言います。
過去1-2ヶ月の血糖値を反映すると言い換えることもできます。
当院では、健診などで血糖値が高い、あるいは尿糖が陽性と指摘され来院された方に対し、まずはこのHbA1cを確認させて頂く方針としております(15分ほどで迅速に結果を出すこともできます)。
HbA1cが6.5%を越えていれば糖尿病の疑いが強くなりますが、7.0%を超えている方は特に注意です。なぜなら先に述べた臓器の合併症を抑えられるかどうかの大まかな境目が、この7.0%という数字になってくるからです。
③ どの様に対応するか?
糖尿病の一番の弊害は、慢性的な高血糖が全身の血管をじわじわと痛め、年単位の時間をかけて多くの臓器に合併症を起こすこと、と先に述べました。
この「血管」には脳や心臓に存在する「太い血管」と、神経や眼、腎臓に存在する「細い血管」があります。
つまり懸念される合併症やその帰結は、
- 「太い血管」が痛む → 脳梗塞、狭心症・心筋梗塞
- 「細い血管」が痛む → 下肢神経障害による下肢切断、失明、腎不全の末の人工透析
といったものになります。
逆に、糖尿病と診断されてもこれらの合併症を起こさずに一生を終えることができれば、糖尿病ではない方々と比べ、人生において大きく損をすることはないでしょう。
五体満足で人生を終えて頂くことが、糖尿病治療の目標ということです。
特に「細い血管」が痛むことに由来する合併症は、血糖値の適切なコントロールによりある程度防ぐことができます(「太い血管」が痛むことに由来する合併症は、血糖値より別ページの血圧や脂質をコントロールする方が、効果的に予防できます)。
この「細い血管」由来の合併症を予防するためには、
HbA1c 7.0%未満
という状態を維持することが勧められています。
年齢や全身状態、お薬を使用する場合はその種類によっても変わってきますが、まずはこの7.0%未満を目指します。そこが達成できる様なら、次は6.5%未満を目指しましょう。
受診される度に基本的には毎回このHbA1cを確認し、その場で結果をお知らせし、生活習慣についてのアドバイスや、場合によっては投薬の検討を行っていきます。
またそれと並行して、腎臓や眼などに合併症が生じていないかも、定期的に確認していきます。
腎臓の痛み具合を反映する尿蛋白を定期的に確認しつつ、眼科とも連携しながら、フォローさせて頂きます。
まとめると、
- 定期的にHbA1cを確認し、高い場合には生活習慣の修正や、場合によっては投薬を検討することで7.0(6.5)%未満を目指す
- 合併症が生じていないか、それぞれの臓器を定期的に確認する
この方針を貫徹することで、糖尿病は多くの場合、過度に恐れるものではなくなっていくと思います。