脂質の値が悪い
このページをご覧になるのは、健診でLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が高い、あるいはHDL(善玉)コレステロールが低いと言われたという方がほとんどでしょう。
それらをまとめて「脂質異常症」と呼びます(以前は「高脂血症」と呼ばれましたが、それでは低HDLコレステロールが含まれないとのことで、変更されました)。
2つのステップに分けて考えます。
ポイントは、「診断基準」と「管理目標」は異なるという点です。
① その脂質値は脂質異常症の診断基準に該当するか?
脂質異常症の診断基準は、日本動脈硬化学会が作成した「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017」に記載されています。
特に問題になるのはLDLコレステロールなのですが、この数字が高い(140以上)と、何が良くないのでしょうか?
答えは
「動脈硬化を引き起こし、それがさらに脳梗塞や狭心症・心筋梗塞などを引き起こす」
からです。
上は動脈硬化の模式図ですが、過剰なLDLコレステロールが血管壁にプラークを形成し、血管の内腔が狭くなっています。
このプラークが破綻するとその上にさらに血栓が乗り、内腔が完全に閉塞することで、その先の組織が血流不足で死んでしまいます。
これを「梗塞」と呼び、脳で起こると「脳梗塞」、心臓で起こると「心筋梗塞」となり、重い合併症を残したり、命に関わる事態となります。
つまり、LDLコレステロールを下げる目的は、
「動脈硬化を予防し、ひいては脳梗塞や狭心症・心筋梗塞を予防する」
ことになります。
② 脂質異常症と診断されたなら、どの程度の値を管理目標にするか?
ここからが重要です。
では、脂質異常症と診断されたら皆一律にLDLコレステロール 140未満を目指せば良いのでしょうか?
答えはNoです。
LDLコレステロールが150でも何もしなくても良い方もいれば、130でもさらに下げた方が望ましい方もいます。
その理由は、動脈硬化を進める要素が脂質異常症だけではないからです。
動脈硬化は脂質異常症のほか、高血圧、高血糖、性別、年齢、喫煙の有無、遺伝的な背景など、多くの要素の影響を受けます。
上の図のように、動脈硬化は脂質異常症単独ではさほど進まないのですが、これにほかの要素が加わってくると、加速度的に進み易くなります。
LDLコレステロールが150でも、女性で喫煙せず、血圧も血糖も低く、かつ動脈硬化を進めやすい遺伝的要素がなさそうな方は、基本的に投薬などは必要ありません。
逆にLDLコレステロールが130でも、男性で喫煙していたり、血圧や血糖が高かったり、あるいは動脈硬化を進めやすい遺伝的要素がありそうな方は、投薬を勧めるケースが多いです。
つまり、脂質異常症単独では問題なくても、ほかの要素が増えてくると体は耐えきれなくなるため、軽くできる要素を少しでも軽くする必要があるということです。
具体的には、下リンクからご自身にとってのLDLコレステロールの管理目標を算出できます。
(診断基準ではなく)管理目標よりもご自身の値が高いとすれば、是正を試みます。
目標値からさほど離れていなければ生活習慣の改善から、大きく離れていればそれに加え投薬を検討します。
まとめると、脂質異常症を考えるうえで重要なポイントは、
「診断基準」と「管理目標」は異なる
ということでした。