肝臓の値が高い
一般的に「肝機能障害」と呼ばれます。
ほぼ無症状のため、健診で指摘されて気づく方が大半だと思いますが、
という流れで当院は進めます。
①まずは頻度が高い原因を考える
- 飲酒による肝障害(アルコール性肝障害)
- 飲酒以外による脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患=NAFLD)
- お薬による肝障害(薬剤性肝障害)
が圧倒的に多いです。
飲酒量が多い方、特に1日に摂取するエタノール換算で、30g(日本酒1.5合もしくはビール750mL)以上を飲まれている男性、もしくは20g以上を飲まれている女性で、ほかの肝疾患を否定できる方はアルコール性肝障害を疑います。
禁酒により改善しますが、肝硬変まで進んでしまうと元に戻すことが難しくなります。
飲酒をほとんどしない方で脂肪肝を認め、ほかの肝疾患を否定できる方は、非アルコール性脂肪性肝疾患(=NAFLD)を疑います。
飲酒はあまりしないのだけれども、ここ数年で体重が急に増えた、という方は要注意です。
NAFLDの80-90%は往年脂肪肝のままで、それ以上悪化することはありません。
しかし10-20%は非アルコール性脂肪肝炎(=NASH)という状態になっており、徐々に悪化して肝硬変、ひいては肝癌に至ることもあります。
「お酒を飲まなくても脂肪肝があれば、肝硬変・肝癌になる可能性がある」と心に留め、減量に努めることが重要です。
肝機能障害を指摘される直前に、新しいお薬やサプリメント、健康食品を始めており、ほかの肝疾患を否定できる方は、薬剤性肝障害を疑います。
ただ実際には、それらの内服を始めてしばらくしてから肝障害を呈することもあるため、被疑薬(肝障害の原因として疑われる容疑者)を中止し、その後肝機能が改善するかどうかを確認するなど、いろいろな側面から判断する必要があります。判断に難渋するケースも少なくありません。
② 念のため頻度が高くない原因も除外する
肝機能障害の原因は、つまるところ①に挙げた3つのいずれか、という結論になることが多いのですが、そのすべてに「ほかの肝疾患を否定できる方」という条件が含まれていることにお気づきでしょうか。
つまりこれら3つは、その性質上、自信を持って診断を付けられるものではなく、「ほかに疑わしい原因もないからまあこれかな」という感覚で診断されているというのが実際です。
故に、頻度が高くなくとも「ほかの肝疾患」を除外する作業は、肝機能障害を呈する方に対しては必須となります。
その「ほかの肝疾患」としては
- ウイルス性肝炎(B/C型慢性肝炎、サイトメガロウイルス肝炎、EBウイルス肝炎)
- 自己免疫が関与する肝障害(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎)
- 胆道結石、膵炎、悪性腫瘍
などがあります。
特にB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスは、気づかない内に感染しているケースがほとんどであり、見逃すと一定の確率で肝硬変・肝癌へ進行してしまう一方で、治療法も近年大きく進歩しているため、早期発見が一際重要です。
肝機能障害を指摘された方の中で、これまでB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスへの感染の有無を確認したことがない方は、血液検査で簡単にわかりますので、是非一度確認をされてください。
③ 血液検査と腹部エコーで①、②をまとめて確認する
ここまでいろいろと述べましたが、
- 血液検査
- 腹部エコー検査
の2つで、
- ①の脂肪肝があるか
- ②の頻度の高くない疾患が本当にないか
をある程度まとめて確認することができます。
血液検査で1日+その結果説明と腹部エコー検査でもう1日、頂ければ、結論をお出しできるケースが大半です(前述の薬剤性肝障害や頻度の高くない疾患が疑われた場合は、その限りではありません)。