漢方治療について
皆さんが抱いている漢方薬のイメージはどの様なものでしょうか。
おそらく
- 西洋薬に比べ効果が乏しい
- 効き始めるまで数ヶ月かかる
- 副作用が全くない
などではないでしょうか?
これらは全て誤解であり
- 西洋薬より効果が強いことがしばしばある
- 最短で5-10分ほどで効果が出る
- 西洋薬と同様に注意すべき副作用もある
というのが実のところです。
当院院長は日本東洋医学会認定の漢方専門医であり、漢方薬を治療に適宜取り入れています(漢方薬が苦手な方、抵抗がある方には無理に使用しません)。
このページでは
に分けて、説明をしていきます。
①西洋医学と漢方の比較
前提として当院も西洋医学を中心に診療を行っております。
生命の危機や重たい後遺症に繋がる様な疾患を見つけ、治療する能力が西洋医学は大変高いためです。
しかし、ここで生じる大きな問題が
患者さんが訴える症状の多くが、生命の危機や重たい後遺症に繋がる様な疾患に由来しないこと
です。
困った症状があり、病院を受診した際に
「おそらく悪いものではないと思いますが、原因がわからないので経過を見ましょう」
と言われることは少なくないと思います。
なぜなら西洋医学は、生命の危機や重たい後遺症に繋がらない病態ついては、必ずしも有用な検査法や有効な治療を持たないからです。
その様な病態は診断、治療するに値しないという考え方に基づいており、よく言えば合理的な、悪く言えば冷たい医学と言うこともできます。
一方で漢方は、癌や心筋梗塞などの生命の危機に繋がる病態を見つけ、治療する力が西洋医学にかなり劣ります。
しかしその分、西洋医学より遥かに広い病態に対応することができます。
漢方は17世紀の江戸時代に現代の体型となりましたが、皆様が今日悩まれる様なこと、つまり
かぜ症状、頭痛、肩こり、めまい、冷え性、のぼせ、動悸、胃腸の不調、疲れやすさ、いらいら、気持ちの落ち込み、不眠
などは、昔の方々も既に悩まれており、その多くに適応となる漢方薬があるのです。
②当院における漢方薬の使い方
当院ではそういった西洋医学と漢方薬の長所をどちらも取り入れる診療を心がけております。
具体的には、以下の様な流れで診療を進めます。
1.血液検査、尿検査、心電図検査、レントゲン検査、超音波検査、内視鏡検査などを利用し、生命の危機に繋がるような重たい病気をできる限り見逃さないよう努めます
2.西洋医学での治療が相応しい病気が見つかれば、まずは西洋医学で治療します
3.西洋医学での治療が有効そうでない場合は、(お嫌いでなければ)漢方薬を活用していきます
③かぜ診療や甲状腺診療と漢方薬との相性
特に漢方と相性の良いのが、かぜ診療と甲状腺診療です。
かぜは実は西洋医学の苦手とする分野です。
「かぜ薬」と銘うつものは数多く市販されていますが、あれらは実のところ、他の領域で使用されている薬を苦し紛れに組み合わせ、幾分か症状を緩和するものに過ぎません。
生命の危機に繋がる肺炎などになればレントゲンや抗菌薬など西洋医学の出番となりますが、一般的なかぜに対して西洋医学は有効な診療体系を持たないのです(もしあれば、新型コロナウイルスの流行であれ程世界は騒いでないと思います)。
一方で漢方は、かぜ診療を最も得意とします。
漢方の起源は古代中国の「傷寒論」という文献になりますが、この「傷寒」とはインフルエンザの様な症状の強いかぜのことを指します。
つまり、漢方薬はもともとかぜに対して開発されたものであり、その有効性は西洋医学を十分に凌ぐと思います。
また甲状腺診療においても漢方の出番は少なくないです。
バセドウ病など一部の甲状腺疾患そのものに漢方薬が有効なケースももちろんありますが、それより重要なのは「甲状腺疾患を疑い受診された方が、結果的に甲状腺疾患でなかった場合」です。甲状腺疾患を疑い受診される方の訴えとして多いのは
- のどに圧迫されていような感覚がある
- 疲れやすい
- むくむ
- 冷える
- ほてる
- 動悸がする
- イライラする
などですが、診察の結果実際に甲状腺疾患が見つかる方は全体の1割にも満ちません。
しかし上記の症状には全て対応する漢方薬があり、それらを用いることで症状が軽減することはしばしばあります。
甲状腺疾患が見つからなかったとしても始めから「経過観察で」という言葉は使わない様心がけますので、ご安心して来院されてください。